「決められた時間、ただ座っていればお金が入ってくる仕事」
そう聞いてあなたはどう思いますか?
パッと聞いた限りでは「楽でいいな」っていう感じですよね。
収入がなくなったらとても辛いことは、仕事を失って初めて分かることかもしれません。
私自身も無職の専業主婦だった時期が長くあったので、仕事がなくてお金が手に入らない辛さ、みじめさはよく知ってるつもりです。
仕事があるだけでもありがたいんだから、楽な仕事を不満に思うのは贅沢だ!
でも、楽な仕事であるがゆえに働くことを辛いと感じる人がたくさんいることを「 ブルシット・ジョブの謎 」は教えてくれます。
「ブルシット・ジョブ」とは?
本の感想に入る前に「ブルシット・ジョブとは何なのか?の定義を。
本文中にはブルシット・ジョブの定義がこのようにありました。
BSJとは、被雇用者本人でさえ、その存在を正当化しがたいほど、完璧に無意味で、不必要で、有害でさえある有償の雇用の形態である。とはいえ、その雇用条件の一環として、被雇用者は、そうではないととりつくろわねばならないと感じている
ブルシット・ジョブの謎:20ページ
簡単にまとめると
ブルシット・ジョブとは?
自分の仕事が誰の役にも立っていないし
なくても構わないと思えるにもかかわらず
まるで重要な仕事をしています。と周りにアピールしなければならない
確かにこれでは会社における自分の存在意義を感じられないのですから、辛くて当たり前ですよね。
ブルシット・ジョブの事例
本文中にあった印象的なブルシット・ジョブをふたつ、あげるとすれば
ブルシット・ジョブの事例1:虚偽の求人
- 出来の悪い部下の尻拭いをするため、本当にやってほしい仕事とは違う架空の業務内容で求人を出す
- 本当に求めている人物像に近い人をコンピュータによる一次審査で落とされないようにするため、送られてきた履歴書に手を加える
- 求めている人を採用して「本当に自分がしてほしい業務 = 部下の尻拭い」に従事してもらう
ブルシット・ジョブの事例2:人をだまして物を買わせる広告制作
- クリックする人がほとんどいないと調査で明らかになっている、ウェブサイト上のバナー制作が仕事
- にも関わらず、クライアントはサムネイル大のバナーに細々とした修正を加えるなど、無意味な作業を要求する
- もちろんクリックされず、広告の成果は出ない
これでやる気を出せ、というのが無理ですよね。
私のやっているブルシット・ジョブ
先日投稿したこちらの記事で、これまでの仕事遍歴をご紹介しました。
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ブルシット・ジョブも一部ありましたが、基本的にはやりがいのある仕事で、とても満足していました。
ただ残念ながら、今、私がやっている仕事はブルシット・ジョブですね。
クライアントやスタッフがいるので詳細を書くのは控えますが、簡単に説明すると
私が現在(2022年3月)やっている仕事
- 企業の抱える、とあるブルシット・ジョブを代行する仕事
- 講習会を開催して世間知らずの主婦を集めて、「1」の作業をさせること
とでも言えるでしょうか。
先ほど提示したブルシット・ジョブの定義、そっくりそのままですね(苦笑)
今はまだこれらの仕事を続けていますが、「他にもっと良いお仕事があれば、今すぐにでも辞めたい」と何年も前からずっと思っています。
男は外で働き、女は家で家事や育児をする?
さて、ここまでは「 ブルシット・ジョブの謎 」に書かれてあることに対して納得していた私。
なのですが、一点だけ「これはどうだろう?」と違和感を感じた部分がありました。
それは男性と女性の、家庭における役割分担についてです。
家事はとても大変!
先ほども書いた通り、私には無職で専業主婦だった時期がありました。
その時の経験を通じて感じていることは、家事や育児をしながら外で働くのはとても大変だということ。
冗談抜きで、家事と子育てだけで1日が終わります!
そもそも専業主婦になった理由が、会社と家事の両立ができないと見切りをつけたから。
実際に主婦になり、母となり、実際に体験することで、「両立、不可!」の感覚を裏付けたとも考えていました。
さらに、仕事柄、ワーキングマザーの話を聞く機会が多いのですが、彼女たちが口を揃えて言うのは
仕事でいっぱいいっぱいで、家事や子育てが手抜きになってます
「家族に申し訳ない」と、罪悪感でいっぱいの方がとても多いな、と言う印象です。
その結果、「子育てママは働かなくてもいい。何なら、働いてはいけない!」と仕事の一環として主張しているくらい。
行政や働いている会社からのロクなサポートもなくて「ワンオペ育児」という言葉に象徴されるように、日本ではママがひとりで孤立している家庭が多いのは、あなたもご存知の通りです。
誰も助けてくれない中で子育てするママは、めちゃくちゃ辛いです!(私もそうでした)
女を家に縛り付ける風習は、いつから始まったの?
家庭におけるタスクを男女で役割分担するのであれば、「男は外、女は内」は、妥当なのかもしれません。
ただ、ここに「この役割分担が始まったのは、資本主義が成立した後だ」という前提を付け加えたらどうでしょう?
「 ブルシット・ジョブの謎 」を読むまで私は知らなかったのですが、男性が働いて賃金を得て女性が家を守るスタイルは、多くの人が都市に集まって工場労働者として働く生き方が始まってからのこと。
それ以前は、男性も女性も農業などの生産活動に従事し、性別による明確な役割分担はなかったそうです。
「知らない」って怖い…
「女だから家事が得意」とは限らない
実は専業主婦になったことがあるにも関わらず、私は家事が苦手であまり好きではありません。
主婦歴20年を超えましたが、今でも家事は手放したいと思っているくらい。
まだ独身だった時に「仕事と家庭は両立できる」と思えたのであれば、結婚したときの私が会社を辞めなかった可能性は十分にあります。
家事が苦手で、仕事をするのは好きなのですから!
私が主張している「子育てママは働くべからず」からやってきた違和感は、ただの思い込みなのかもしれません。
今はまだ完全に考えを変えるには至っていませんが、引き続き、女性にとっての理想的な働き方を追い求めていこうと考えています。
「女は家を守っていればいい」がベストとは限らないですよね!
「誰かの役に立つ仕事に、賃金を払う必要はない」論
ここまではブルシット・ジョブについて話してきましたが、世の中にはブルシットではないジョブももちろんあります。
誰かの役に立ち、社会に求められる仕事と言える、ブルシットではない仕事。
いいことづくめに見えますが、これらの仕事が共通して持つ大きな問題点として「低賃金」があります。
東京オリンピックのボランティアをした知人の話
東京オリンピックの際、外国人ゲストのおもてなしをするボランティアをした方が、私の知人にいます。
彼女の感想は
一生で二度と出来ない貴重な体験、とても良い経験だったよ
ただ、私はそのセリフを聞いて思ったのは、「それって、やりがい搾取じゃないの?」でした。
ボランティアなので、報酬はもちろんなし。
交通費などの実費は支給されたそうですが、オリンピックが実際に開催されるまでのドタバタ劇を思うと、とてもじゃないけれども割りに合わない感覚を持ってしまいます。
コロナ禍が浮き彫りにした、エッセンシャルワーカーの問題点
あと、コロナ禍になってからスーパーや医療、福祉といった社会インフラを維持するために働く、エッセンシャルワーカーが注目を集めるようになりました。
そして、彼ら、彼女たちの賃金が、あまりにも低いことも。
経済活動が強制的に止まるに至って、ようやく注目されたエッセンシャルワーカー。
これまで注意を払われることが少なかった理由として、本文中では
(1)労働はそれ自体がモラル上の価値であるという感性がある
ブルシット・ジョブの謎:193ページ
(2)それが有用な労働をしている人間への反感の下地となっている
(3)ここから、他者に寄与する仕事であればあるほど、対価はより少なくなるという原則が強化される
(4)さらに、それこそがあるべき姿であるという倒錯した意識がある
これではないか、とありました。
私の言葉で簡単に整理すると、
エッセンシャルワーカーの賃金が低い理由
人の役に立つ仕事をすると「満足」という感情が得られるのだから、さらにお金も求めるなんて傲慢だ!
何ですか、これ。ありえない!
「誰かのために何かをしてあげて感謝されるのは気持ちいいのだから、お金なんていらないよね」
そう言われて納得できる人は、果たしているでしょうか?
さらに、
女性を家に縛り付けるために、他人のケアに関する労働に支払う賃金を低く抑えているのかもしれない
こんな考えも浮かびました。
経済的に女性が自立することを難しくしている原因のひとつは、おそらくこれなので。
資本主義が終わる日
働いて賃金を得て生きるために必要な物品と交換する、資本主義システム。
今でこそ当たり前だと私達は思い込んでいますが、資本主義というシステムが採用されてから200年ほどしか経過していません。
さらに本文中では
現在の意味の「経済」の観念が定着したのは19世紀で、それも最初期には、現在でいうエコロジーというふくみもあったのです。少なくとも固有の法則と原理をもつ自律的実体とみなしうる「経済」なるものが誕生して、たかだか200年にすぎないのであって、人類史においては、ごくごくわずかの時間です。もしかすると、その歴史が終わりつつあるのかもしれないし、それを想像することがいまとても大事なのだ、ということです。
ブルシット・ジョブの謎:242ページ
私もこの意見には全面的に賛成で、資本主義は賞味期限切れが近いと考えます。
幕末と似たようなタイミングに、たまたま自分が生きているだけ、っていう感じ!
私が生きている間は、大きな変化は起こらないかもしれません。
でも、次の世代がこの世を去るまでには、大きく変わっているはず!
だからこそ、今の子ども達には学校の勉強だけではなく、根本的な生きる力を身につけてほしいと願っています。
お金に頼らず生きていけるようになったら、死ぬまでずっと安泰ですから。
「ブルシット・ジョブの謎」はこんな方におすすめです。
今回ご紹介した「 ブルシット・ジョブの謎 」は、こんな方にぜひ読んでいただきたいです。
自分の仕事に悩みを抱えている方
働き方について書いた本なので、仕事について悩んでいる方は一読することをお勧めします。
「自分の仕事がブルシット・ジョブではないか?」と思い当たる方はもちろん、
- ブラック企業に勤めていて、とにかく今の仕事を辞めたい方
- 転職活動中の方や、転職を検討している方
- 今は働いていないけれども、再就職したいママさん
とかも、参考になる点が多いはずです。
「 ブルシット・ジョブの謎 」を読んで、私も今回こそは今の仕事を辞めようと固く決意できました!
他人には「恵まれてる、うらやましい」って言われますが、ブルシット・ジョブを長く続けると、メンタルが病みそうです…
中高生のお子さまを持つお父さん、お母さん
前述したとおり、今の子どもたち、つまり次の世代が生きているどこかの段階で、間違いなく経済システムは大きく変わります。
経済とお金の関係がどのようになるかはまだ不透明ですが、お金の持つ力は今より小さくなるかもしれません。
「お金」そのものが消えても、おかしくないです!
「お金を出せば何でも手に入る」意識にどっぷり浸かっているのは、危険ではないのかな、と。
「生きる力を子どもに身につけさせるには?」を考える材料として、「 ブルシット・ジョブの謎 」はピッタリです。
中学生には厳しいかもしれませんが、読書好きの高校生なら親子で読めそうな難易度ですね。
「ブルシット・ジョブ」の鈍器っぷりに怖気づいた方(苦笑)
「 ブルシット・ジョブの謎 」に興味を持った方であれば、おそらくこの新書が「 ブルシット・ジョブ 」をベースに書かれたこともご存知かと思います。
当初は「ブルシット・ジョブの謎」ではなくて「ブルシット・ジョブ」を読もうと、書店に行きました。
なのですが、「ブルシット・ジョブ」のあまりの鈍器っぷりにビビってしまい、
読みたいなぁ。でも、この本、難しそうだなぁ。どうしよっかなぁ。
と迷っていた私の前に現れたのが「 ブルシット・ジョブの謎 」
すぐさま飛びついたのは、言うまでもありません(笑)
今の働き方と経済の未来に感じているモヤッとした不安を、この本を読んで吹き飛ばしましょうね!
「
ブルシット・ジョブの謎
」
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